秋は芸術 ~上海で農民画を学ぼう~

feature_v01

農民画の歴史・背景

農民画は、近代に生まれた文化ですが、国内外で高い評価を受け、すでに中国の伝統芸術の1つとされています。1950年代に陝西省戸県の農民が、農作業を賛美し、豊作を祈願するため壁に描いたのが始まりとされています。特に盛んな地域としては、発祥の地と言われる戸県を始め江西省の永豊県、安塞県、江蘇省の邳県、南京市六合区、そして上海市の金山区です。

70年代になると、農民画の趣旨が当時の社会とマッチし一大ブームが起こり、美術の専門家たちがやって来るようになります。彼らの指導を受け、さらに、古くから続く伝統芸術の切り絵や刺繍、影絵などをモチーフとすることで題材や表現の幅が広がり、絵画として独自のスタイルを確立。素朴で温かなタッチと鮮やかな色彩が特徴的で、中国ならではの絵画として国内外から人気を集めています。

feature_v02
農民画を教えてくれる陳恵芳先生

先生が語る農民画

今回、取材にご協力いただき、農民画を教えてくれたのは、上海市金山区出身の陳恵芳先生。陳先生は、農民画の最初期である57年から四代続く、農民画家の家系に生まれました。子どもの頃から農民画に親しんできた陳先生は、高校を卒業すると同時に、農民画家として活動を開始。95年には、日本の横浜中華街発展会の招集を受け、作品を発表しました。2004年には金山に自身のギャラリーを開き、10年、日本で『縁分』という農民画の絵本を出版。そして、13年から「寛喜Kuanxi」で講師として農民画の普及に努めています。

そんな陳先生に農民画の魅力とは何か聞いてみたところ、「それは自由であること」とのお答え。農民画はまず色彩が自由です。中国古来の絵画である、墨一色の山水画・水墨画とは異なり、好きなところに好きな色を使用。庶民から生まれた文化なので、画材にもこれと決められた絶対的なものはありません。

また題材も自由。見たものをそのまま描くとは限りません。作者の「理想」が重要とされ、異なる季節の花を競い合うように描くこともあるとか。ただ、同時に自由であることが難しい点でもあると言います。豊かな想像力とそれを活かす表現力は、農民画を創作するうえで欠かせない要素です。

最後に、講師としての仕事を選んだ理由を尋ねてみたところ、多くの人に農民画を好きになってほしいからとのこと。生徒一人ひとりと向き合う陳先生のまなざしから、農民画への愛が伝わってきました。

さて、農民画の歴史と魅力を知ったところで、早速体験してみましょう!

feature_v03
鮮やかで味わい深い陳先生の作品の1つ

 

feature_v04

農民画教室に到着

本日は農民画を体験するため、中国文化が学べる教室「寛喜 Kuanxi」にやって来ました。ここでは毎週日曜日、金山区から農民画の先生を招いて農民画教室を開いています。場所は、錦苑という住宅地のマンションの一室。中に入ると講師の陳先生が出迎えてくれました。これはこれは、おキレイですね…なんて、そんなセリフを言う度胸はないのですが。

今回は絵画体験ということで、絵を描くのが好きな編集Fと、何にでも首を突っ込む性格の編集48、そして高校の美術の先生だったという経歴を持つI氏の3人が参戦。

レッスンを始める前に

机にはパレットに、ポスターカラー、絵筆など画材のほかに、お手本の絵と鉛筆で描かれた下絵が用意してありました。体験レッスンは初心者が多いので、下絵に色を付けていく作業で農民画に慣れていくんですね。これなら絵が苦手な人でも気軽にチャレンジできる、というわけです。かく言う僕も不器用なので、これはありがたい。

絵のモチーフは「上海外灘」と「パンダ」の2種類。「パンダ」は素朴な感じがグッときますね。「上海外灘」は、中央の人物を好きなように変えて構わない、とのこと。取材班は僕を含めて4人ですから、2人ずつに分かれましょう。編集Fと編集48が「上海外灘」を、僕とI氏が「パンダ」を色付けするということで決まりました。さてさて、準備は万端。それでは農民画に挑戦してみましょう!

体験レッスン開始

まずは、色を塗る順番について教えてもらいます。筆を湿らせてから絵の具を付け、基本は上から下、左から右の順で色付け。色と色の境界部分に気を付けるようにとのこと。これは手に絵の具が付かないようにするためで、右利きの場合。左利きの人は、右から左だそうです。オーケーオーケー、楽勝。…と思ったら、ストップがかかりました。あ、拭き足りないですか。失礼しました。

feature_v05

フチを囲むのはNG

僕が指導を受けている間に、編集Fは境界線を塗り始めました。そうすればハミ出さないで済みますもんね、おー、頭いいなぁ。真似しようとしたら、先生が編集Fに「フチを先に塗ると色ムラになるから、オススメしないわ」とアドバイス。筆もできるだけ同じ方向に動かすと良いとか。勉強になるなぁ。

ポイントは水の量

1つの色を塗り終えると、先生が注意点を教えてくれます。水の量についてのお話しが多いなと思っていたら、どうやらポスターカラーはそのまま使用しているわけではなく、先生が独自に調整したものだそうで、特に水が重要なのだとか。水分の多い少ないによって色の出方や紙の上での伸びに違いが出てくるとのこと。素朴で味わい深い色合いは、そんな研究の末に生まれたものだったんですね。

好きなキャラを描く

先生のお話に聞き入っていると、編集48が絵の中央の人物に漫画のキャラクターを追加したいと言い出しました。この人はまた唐突に…。ところが、先生は快くOK。鉛筆を受け取った編集48は、いそいそと下書きを追加。しかしなかなか満足のいく出来にならず、消しゴムを手に取ります。えっ、それは大丈夫? ああ、そんなに力を入れたら…ビリッ! と嫌な音が。とりあえず先生を呼ぼうとすると、編集48がこれを必死に阻止。隠ぺいするつもりのようです。どうせ後でバレるのに。

feature_v06

トラブルは立て続けに

どうにかキャラクターを描き込めたのか再び筆を取った編集48。その筆を茶色い液体の入った容器にイン。んっ!? ちょ、ちょっとストップ、それはバケツじゃない。僕の声に固まる編集48。筆が浸かっているのは、スタッフの方が持って来てくれたお茶のコップです。あーあ、と呆れる僕と爆笑する編集Fを横目に「やっちゃったか。うん、それよくやるんだよね」と励ますI氏。大人ですねぇ。うん、笑いをこらえているように見えるのは気のせいに違いない。

仕上げはドライヤー?

そんなことをしているとI氏が作業を完了。I氏が軽く手で絵を扇いで乾かしていると、スタッフの方が来ました。ドライヤーで乾かしてくれるとのこと。ドライヤーって意外だなぁ。と、そこへ編集48の「でけたで!」の声。あれ? 同じデザインの編集Fよりずいぶんサッパリしているような…先生が覗き込むと「ココとココ、それからココも、まだ塗ってないわね」と指摘。真っ赤になって再開する編集48でした(苦笑)

無事、体験が終わる

開始から2時間半。4人の作品が仕上がりました。絵が得意ではない僕も、下絵のおかげで何とか完成。レッスンの時間は3時間ですから、スムーズだったのではないでしょうか。

見本はありましたが、それぞれ個性が出ています。一番早く終えたのに、ハミ出したところもないI氏はさすがですね。編集Fは、色にムラはありますが、丁寧な仕上がり。編集48の作品は、豪快さが伝わってきます。紆余曲折ありましたが、作品が完成すると嬉しいものです。みなさんも上海にいる間に一度試してみてはいかがでしょうか?

 

feature_v07

体験者にインタビュー

同じ農民画の体験レッスンに参加していたお2人にもお話を伺ってみました。
普段は「寛喜」で中国結びを学んでいるというお2人。隣接する教室に飾ってある農民画に興味を持ったのが、参加のきっかけだとか。「観賞するのもいいけど、実際にやってみて、もっと興味が持てました!」と体験レッスンの内容に大満足の様子でした。

feature_v08feature_v09

今回ご協力いただいた教室

中国結び・苗族刺繍・金山農民画の教室を、上海(浦西校・浦東校・高島屋校)・蘇州、無錫で実施している中国文化教室。手作り文化の国際交流の場を提供している。『Kuanxi』という言葉には、みんなに喜んでほしいという願いが込められているという。

【Info
・虹橋校 住所 虹橋路1765弄18棟38号102室(×水城路)
・金山校 住所 楓涇鎮中国農民画村丹青人家4号(×中洪路)
電話番号  134-8224-5200(日本語可)
営業時間  9時~18時(土曜休み)
Eメール   mayi.kuanxi@gmail.com
URL      ameblo.jp/kuanxi

 

上海で農民画が見られるスポット

・中国農民画村
上海における農民画の中心地とされ、「中国歴史文化名鎮」に指定されている。農民画の研究、制作、展示、収集を実施。
Info
住所   金山楓涇鎮朱楓公路8258弄169号(×中洪路)
入場料  30元
電話番号 5735-5555
営業時間 8時~17時まで

・D.ART GALLAERY

中国オリジナルの農民画作品の発掘、保護、宣伝などをメインとした民間芸術のギャラリー。2004年のオープン以来、日本、フランス、アメリカなど世界各国から観光客が訪れている。

【Info
住所    南昌路63号1階(×思南路)
入館料   無料
電話番号  133-0184-7042(日本語可)
営業時間  10時~19時まで
URL     d-art.cn

~上海ジャピオン2014年11月7日号

最新号のデジタル版はこちらから

香港便利帳

PAGE TOP