上海〝鎮〟道中

行政区分の一つ、鎮

「朱家角古鎮」や「七宝古鎮」など、趣ある街並みの中で茶屋や軽食店が並び、川には遊覧船が浮かび、多くの観光客で賑わう古鎮。一方で、市中心部には、観光地や水郷はないのに〝鎮〟と名の付く場所があり、不思議に思った人は少なくないはず。そもそも鎮や古鎮とは何なのだろうか?

鎮とは中国における行政区分の1つで、英語でtownと訳され、日本の「町」にほぼ相当。中国では、上海市や北京市など直轄市を含む①「省級行政区」が行政区のトップに位置し、その下に②「地級行政区」、③「県級行政区」、最後に④「郷級行政区」がある。上海市には②がなく、①上海市③長寧区④新涇鎮or天山街道となる。鎮や街道に明確な定義はないが、およそ人口の違いによるもの。つまり鎮は、④に属する中国の最小行政区分なのだ。

歴史が詰まった古鎮

では古鎮とは? これは、鎮の中でも数百年以上も前からほぼそのままの形で残る、居住区と商業の場が一緒になったエリア。文化の発展には水が欠かせないことから、昔の人たちが川の周囲に集落を形成していったため、古鎮には川が流れているところが多く、観光用に遊覧船が用意されるようになった。

古鎮は元々商業が栄えたエリアで、街並みもキレイに残されているため、「朱家角古鎮」や「七宝古鎮」など一部古鎮では観光地化が進んでいる。一方「金澤古鎮」、「羅店古鎮」など、古鎮として区政府の文化遺産保護制度に認定されているものの観光地化されず、住民が日常生活を送るような場所もある。それでは次のページから、今後人気が高まることが期待できる、少しマニアックな古鎮を巡る旅へ出掛けよう。

堀に囲まれた川沙古鎮

2号線「川沙」駅から徒歩15分ほどの場所に構える「川沙古鎮」。普段は浦東国際空港に向かう時に通過する程度にしか接点がない川沙にも、古鎮があるのだ。ここには「朱家角古鎮」でよく見掛ける遊覧船や橋がなく、さながら古都のような落ち着いた佇まい。区政府からの支援が大きいのか、街並みもキレイに整備されていて、今でこそ観光客はまばらだが、今後人気が出そうだ。

「川沙古鎮」の歴史は古く、明代の1557年頃には集落が誕生。このエリアは城壁と堀によって敵の侵入を防いでいたそうで、そのため一帯は今でも護城河という堀に囲まれている。また堀に囲まれた一帯の南東側にある「川沙古城墻公園」に一部城壁が残されているほか、その名残で付近の道には東城壕路や北城壕路といった道路名が付けられたという。

新旧の人気飲食店が並ぶ

歴史が詰まったエリアである一方、古鎮の中心部には観光地化の波が来ていて、飲食店や雑貨店が多く並ぶのが、南市街と中市街という道。1905年開業のレストラン「国営工農飯店」といった100年を超える老舗が今もなお構える傍らに、人気カフェ「麦隆咖啡」などの若者向けスポットが新たにでき、新旧の建物が並ぶ。串焼きなどの軽食販売店は設置されていないため、その分景観が楽しめるはず。

また古鎮近くの「川沙公園」には、湖北省武漢市にある歴史的建築物「黄鶴楼」を模して建てられた「鶴鳴楼」が高々とそびえ、大都市・上海の中でその存在感を放っている。建物内に入ることはできないが、高層ビル以外でこれほど高い建築物は珍しい。周辺には、比較的最近整備されたと思しき長郎もあり、川沙古鎮及びその周辺で、1日観光できる。

再開発が進まぬ場所

「朱家角古鎮」があることで有名な、上海西端に位置する青浦区。2017年末に軌道交通17号線が開通し、市中心部からのアクセスが劇的に向上した区で、淀山湖もあることから観光客は比較的多いイメージがあるが…ここ「金澤古鎮」及び周辺の金澤鎮は、再開発や観光地化から取り残された場所だ。

「金澤古鎮」へのアクセスは、1号線「黄陂南路」駅近くのバス停で高速専用バス「商高速専線」(7時半、9時、1040分ほか発)に1時間半ほど乗るか、17号線終点の「東方緑舟」駅前で「示範区2路」やタクシーに20分ほど乗る必要がある。タクシー自体ほとんど待機しておらず、アプリで呼んでもなかなか捕まらないため、自家用車がなければ交通の便は非常に悪い。また市中心部行きの高速専用バス最終が17時発で、これに乗れないと帰る手段が限られてくる。

延々と居住区が広がる

無事「金澤古鎮」の入口に着くもの、観光客らしき姿も、観光地されている様子も見受けられず。代わりに、住民が家の前で洗濯物を干したり料理をしたり、網かごを使って川で魚を獲ったりといった、日常生活が淡々と営まれている。先述の「川沙古鎮」内にも民家はあったが、こちらの「金澤古鎮」は居住区エリアという印象がより一層強い。石畳の道もでこぼこがあって整備されておらず、観光客を呼ぼうという姿勢はないようだ…。かろうじてエリア内を流れる川には遊覧船が数台準備されているとはいえ、川岸に寄せられたままで、動く気配はなし。

しかしこういった不便さも、悪いことばかりではない。家屋の一部が朽ち始めている一方、石橋が保存され、昔ながらの光景が残るという点では「金澤古鎮」こそが本当の意味で古鎮といえるのかもしれない。

~上海ジャピオン2020年11月20日発行号

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