民族訪ねて三千里~第15回

白鳥の琵琶と仙女
河西回廊のオアシス
ユグル族は、
人口が少ないためか中国でもそれほど広く知られていない。
彼らのほとんどが、
羊や牛の放牧で生計を立て、
これらの家畜から採れる羊毛や肉、
牛乳、皮革も貴重な現金収入源とされる。
また、大麦やアブラナを僅かに栽培するが、
近年、農耕民によって小麦やジャガイモも持ち込まれた。
遊牧民である彼らは主にゲル(パオ)に住むが、
一部定住化している者もいる。
家は敷地をレンガの壁で囲み、
母屋、厨房、納屋などを中庭の周りに配してある。
納屋の燃料置き場には、石灰や薪のほか、
牛の糞を乾燥させたものを保管するとか。
ユグル族には、古くから伝わる民話がいくつもある。
そのうちの1つ「白鳥と琵琶」を紹介しよう。


「その昔、ユグル族が楽器を持たなかった頃、
一日中こき使われては腹一杯に食べることもできない若者がいた。
しかし彼は素晴らしい歌声の持ち主で、
彼が歌うと人々は憂いも苦しみも忘れることができ、
1羽の白鳥が舞い降りてきて、
歌に合わせて羽ばたいたのだった。


ある日彼がいつもの湖畔に行くと、白鳥は鷹に襲われ死んでいた。
彼は非常に悲しみ、白鳥の骨を持ち帰ったが、
翌朝、骨は美しい琵琶となっていた。
琵琶を弾いてみると、天女が舞い降り、
彼と共に馬に乗って草原を駆けて行くのだった」。
ユグル族が暮らす甘粛省には、
中国と西方を結ぶ「河西回廊」が通る。
隣接する青海省との境には祁連山脈が横たわり、
また北にはトングリ砂漠やバダインジャラン砂漠が広がる。
河西回廊のオアシスを訪れ、モンゴルの歴史と、
ユグル族の穏やかな暮らしを覗いてみよう。

1. ユグル族の女性。正式な民族衣装は晴れ着として残るのみだが、普段着にも遊牧民らしさが見られる 2. 馬蹄寺の石窟には、白い仏像が美しく並ぶ 3. 万里の長城の最西端・嘉峪関。建設当時のままの姿を残す

~上海ジャピオン10月21日号

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