合言葉は〝環保〟
若者も省エネを意識
地球環境を守るという取り組みは、世界的規模で行われている。
中国も例外ではなく、環境保護の略語である「環保」という言葉を、
新聞やテレビ、街中で見かけない日はない。
上海では2007年5月1日に「緑化条例」を施行し、高層ビルの屋上の緑化などが進められ、
市緑化管理局の調べでは、現在市民1人当たりの緑地面積は12・51平方㍍、緑化率は38%に達している。
また、昨年6月1日からレジ袋の有料化も始まり、環境保護と省エネの促進が加速中だ。
マーケティング会社・インフォブリッジが、上海の15歳~35歳の若者を対象に行った調査では、
普段の生活で環境を守るために何か行っていると答えた人が84%を数え、
若者の間での環境保護への意識は高い。
中でも、自宅の節水・節電などの省エネ活動と買い物の際に
自分の買い物袋を持参する人の割合が90%近くとなっており、
レジ袋有料化による市民の環境保護意識の向上という目的は、着実に成果をあげているようだ。
買い替え補助実施中
家電はエコ製品を
また市では、リサイクルも環境保護における重要事項として重視している。
今年8月15日からは、冷蔵庫・テレビ・洗濯機・エアコン・PCの省エネ・エコ家電
買い替え補助サービスを開始しており、
条件を満たす利用者には購入金額の10%が助成金として交付されるようになった。
国家商務部の発表によると、市では8月31日までに3・78万台の前述の家電がリサイクルされ、
3・05万台の新家電製品が販売され、売上総額は約1億1700万元に達した。
これに関しても、市民の注目は高く、一般的な製品より高価な省エネ家電の購入をした人が、
インフォブリッジの調査では72%にも上っている。
値段が高くてもエコ製品の方を買うと回答した人も、多分買うという人も合わせると95%。
エコ製品は支持されているようだ。
では、リサイクルの実際の現場を覗いてみよう。
リサイクルの現場へ
ジャピオンはいくら?
上海生活で最も身近なリサイクルの現場といえば、住民居住区内の廃品回収所だ。
居住区の入口付近にいて、何となく気になっている人も多いだろう。
リサイクルレポはここからスタート!
残暑も和らいできた9月の昼過ぎ、読み終わったジャピオン3冊とペットボトル数本を持って、
自宅付近の廃品回収業者を訪ねた。
ジャピオンは重さを量られることなく、おばちゃんの手感覚で言われた値段は3角!
ジャピオンは1冊あたり1角で回収されたのであった。
予想外の安さに茫然としていると、「新聞紙は1㌔9角よ。雑誌よりは高値なんだからいいでしょ」と妙な慰めを受けた。
新聞紙は雑誌より流通量が多いのでリサイクルしやすく、値段も高いのだとか。
回収代金上昇傾向
廃品と経済のリンク性
気になるのは、もう1つ持ち込んだペットボトル。
500㍉で1本8分、つまり0・08元だ。
先月の8月に、流しの廃品回収の人から2本で1角と言われたことを考えると、こちらは得した気分に。
さらに昔の記憶をたどり、1本1角だったときもあったなとつぶやくと、
2008年8月の北京五輪前は1本1・5角くらいだったよと、くだんのおばちゃん。
最盛期に比べるとかなり下がったわけだが、値段はどうも回復傾向にあるみたいで、
先月の8月末より1本あたり3分(0・03元)ほど突然上昇したそう。
「北京五輪が終わって2008年9月末から、廃品の値段は日に日に下がったわ。そしたら金融危機でしょ。
先月より値段が上がったってことは、経済も回復傾向にあるんじゃない?」と。
中国や世界経済の状況は、リサイクルの現場から見て取れるのかもしれない。
100以上の回収業者
リストラ再就職を支援
廃品回収所に欠かせない道具と言えば、廃品を運ぶ荷台付き三輪車だ。
その三輪車にも種類があり、番号が貼られた専用の屋根付き三輪車もある(写真1)。
番号があることが正規業者の証とされ、番号は各業者に割り振られ、
盧湾区だけで100以上の同様の正規廃品回収者がいると言われる。
中には、リストラされた40歳以上の女性と50歳以上の男性の失業者救済を目的とした
プロジェクト「4050工程」の一環で、再就職した人も多い。
正規回収業者ということもあり、回収価格が流しの廃品回収の人たち(写真2)より高いため、
日系レストランからの発泡スチロール回収依頼や、ショップからのダンボール回収依頼なども多く、
廃品を持ち込む市民も少なくなかった。
ちなみに1日の稼ぎは、100~200元に上るとか。
大規模回収所へ
大量の廃品にビックリ
話を聞き終わり帰ろうとすると、回収業のおばさんはさらに大きな廃品回収所に行くというので、
連れて行ってもらうことに。
おばさんの自転車に併走すること1時間、夕方前に中山南一路近くの大規模廃品回収所へ到着。
そこは来年の上海万博の整備区画となっているようで、あちこち取り壊し作業が行われていた。
その一角に廃品は集められ、山のように積み上げられている(写真3)。
廃品はペットボトル、くず鉄、新聞紙、ダンボールなど、種類によって分けられており、
それぞれ回収する業者が決まっていた。
運ばれて回収される廃品の量も半端ない。
ペットボトルが入り、パンパンに膨らんだ、縦1㍍×横1㍍×高さ1・5㍍の麻袋が何個も並んで、
次なる輸送地へ運ばれるのを待っていた(写真4)。
この袋は満杯状態で約25㌔になるそうで、1日で約50袋、多いときで80袋以上にも及ぶとか。
ペットボトルを袋に詰めた後、淡々と背負って運んでいく人の様子は圧巻だった(写真5)。
回収作業をお手伝い?
売上げは100万元
連れてきてもらったおばさんは作業を終え、ここでお別れ。
自分1人残り、鉄パイプや鍋、ボンベといったくず鉄の回収作業を眺めていると、
1台のトラックがやってきた。
回収したくず鉄の積み込み作業が始まるのだ(写真6)。
暫くして、自分の「為人民服務(人民に奉仕する)」と書かれたバッグを見かけた作業員のおじさんは、
冗談めかして「〝人民に奉仕する〟なら、俺たちの作業も手伝えよ」と。
こちらも思わず、「じゃあ、〝向雷鋒同志学習〟(善行を重ねた雷鋒さんに学び)手伝いましょう!」
と中国で有名な言葉で切り返し、お互い大笑い。
一気に距離が縮まった。
話を聞くと、この回収ステーションは請負制がとられていて、
廃品1項目に対する場所代込みの請負代金は1年で10数万元に上ると言う。
廃品でその代金をペイできるのか疑問だったが、
廃品回収による売上げは年間100万元を超えるところもあるとか。
それを聞くと、廃品の山も宝の山に見えてくるから不思議なものだ。
廃品回収に長蛇の列
市場同様の交渉術
18時半頃、廃品回収業の人たちの大群が突如現れた。
1日の回収を終えた人たちだ。
どの人も、荷台付きの自転車に廃品を山のように積んでいる。
その数が多すぎて回収ステーションは一気に渋滞し、外の一般道路まで列は伸びた。
計算が合わないといって、回収料金について口論を始める人や料金に色をつけてもらおうと頼み込む人など、
街中の市場さながらの光景が各所で広がる。
作業が一段落した20時過ぎ、挨拶をして帰ろうとすると、
くず鉄回収の最終地点の埠頭まで連れて行ってくれるとのこと。
くず鉄は閔行区の黄浦江の埠頭で売却され、製鉄所へ船で運搬することとなるようだ。
くず鉄1日6㌧以上
船で運搬、江蘇省で再製
1日1回か2回埠頭まで運ぶというくず鉄は、1回につき6㌧は積み込むという。
まずくず鉄は、埠頭に行く前に中継地点に運ばれる。
そこでは圧縮・梱包待ちのダンボールや新聞、雑誌が積み上げられていた(写真7)。
くず鉄のうち爆発の危険があるボンベなどがそこで卸され、再度処理される。
埠頭ではトラック丸ごと重量を量った後、くず鉄全体にワイヤーを掛け、一気に引きずりおろされた。
手作業で卸されると思っていただけに、その豪快さにビックリ。
出来上がった〝鉄の山〟は翌日船に積み込まれ、長江を上り江蘇省の製鉄所へと運ばれ、再製されるのであった。
ゴミの分別や家電処理などで起こる環境汚染など、課題も多い中国のリサイクル。
しかし、活気溢れるその現場を目の当たりにし、
自分も地球環境保護に何か役立ちたいなと思いつつ、その場を後にしたのだった。
~上海ジャピオン9月18日号より