食道をゆく 第36回 肉松

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肉松
~江蘇省太倉市~

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甘じょっぱい味が癖になる肉松。コンビニで1袋15元程度

中国独特の豚肉でんぶ
紅焼肉を作るはずが…

 日本人にはあまり馴染みのない、豚肉でんぶ(佃煮)・肉松。
甘じょっぱい味が特徴で、中国では、お粥やパンにのせたり、おにぎりの具として人気だ。
 その由来には、福建省の福州とする説と、江蘇省の太倉とする説とがあるのだが、
ここでは太倉にまつわる話を紹介する。
 清朝同治年間の1874年、太倉には倪徳(げいとく)という評判の名シェフがいた。
ある日彼は、状元(官吏登用試験・科挙の首席合格者)の陸増祥(りくぞうしょう)に雇われ、
政府の要人や官僚たちを招いた宴の席で、料理することになった。
 するとその日、偶然にも息子の婚約者が、太倉へ倪徳を訪ねてきたのだ。
驚いた倪徳はすっかり気もそぞろになり、得意料理だった紅焼肉(豚の角煮)を煮焦がしてしまった。

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?山園は、もとは明代の政治家・文人である王世貞の私邸だった。入場料は1人20元

 汁気はなくなり、脂身と肉が分離して、すっかり形がなくなってしまった紅焼肉。
焦った倪徳は、このままでは大目玉をくらってしまうと、とっさに機転を利かせ、
焦げた部分だけを除き、味付けをしてそのまま炒めた。
恐るおそる味見をしてみると、これが意外にも美味い。
 ドキドキしながら出来た料理を運んでいくと、客たちも大絶賛。
陸増祥は拍手喝采で、この新しい料理に「肉松」という名前をつけた。
以来、太倉では宴を開く度に倪徳を招き、肉松を作らせるのが上流階級での流行りとなった。
そして、次第に太倉の特産物として全国に広まっていったのだ。
 肉松は、上海でもコンビニやスーパーなどで売られている。
しかし、一度その本場へ足を運んでみれば、また違った味が発見できるかもしれない。

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【アクセス】
上海総合バスターミナル(18時55分最終)、
または上海南バスターミナル(18時20分最終)から、片道約90分、20元

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~上海ジャピオン7月30日号より

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