春節をゆく

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やっぱり赤が好き!?
春節誕生の由来とは

 元日が過ぎたかと思いきや、上海の街は、まだまだ年の瀬の雰囲気。
そう、中国では旧暦で新年を祝うため、その正月たる「春節(旧正月)」が、
今年は2月3日(木)と、もうすぐそこに迫っているのだ。
至るところで提灯など春節用の飾り物が売られ、街は赤く彩られている。
 この飾り物の数々が全て赤いのも、単に中国人が赤色が好きだからというわけではなく、
ちゃんと理由があるのだ。
まずはその理由を探りつつ、春節の歴史をひも解いてみよう。
 …と、その前に知っておきたいのが、中国語で〝年越し〟、〝新年を祝う〟を意味する「過年」という言葉。
「過年」の「過」は中国語で、「越す、超える」という意味だ。
そして、もうひとつの「年」。
実はこれが、民間に伝わる春節の伝説において、大きなカギとなる言葉なのだ。

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獰猛な怪獣、「年」
効き目抜群の撃退法

 その昔、中国には「年」という名前の怪獣がいたという。
この「年」は、頭に鋭い触覚を持っており、風より速く走り、
雷のような鳴き声を轟かす、何とも獰猛な生き物だった。
もちろん、家畜を見れば喰らいつき、人を見れば襲う。
そのひどい有様を見た天神は、「年」を罰として海底深くに閉じ込め、
年に一度、大晦日にしか出ることを許さないようにしてしまった。
 そしてある年の大晦日。人々は家の中に閉じこもり、びくびくしながら「年」がやって来るのを待った。
夜になり、ついに「年」がある村にやって来た正にその時、
家の外で防寒用に焼いていた竹が突然、「パン! パン!」と音をたてた。
驚いた「年」は、その場から逃げだしてしまい、さらに逃げる途中、
洗濯物干し場に赤い服が並んでいるのを見ると、眼を刺されたような衝撃を受けた。
「年」が慌てふためく様の一部始終を見ていた人々は、
この「大きな音」と「赤い色」こそが、「年」の弱点だと知ったのだ。
 それからというもの、人々は毎年この時期が来ると、
赤い飾りを家中に施し、爆竹を盛大に鳴らすようになったのだという。
その効果はてきめんで、再び「年」がやって来ることはなかったが、
その風習だけが災いを振り払うものとして残り、現在まで受け継がれてきたのだ。
 しかし、春節の風習はこれだけには留まらない。
次ページからは、さらに突っ込んで探ってみることにしよう。

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赤い紙で運を呼び込む
昔は桃の木に書いていた

 赤い飾り物といっても数あるが、中でも代表的なのが、「春聯」。
赤い紙に縁起の良い対句を書いて、家や店舗などの入口に貼る紙のことで、
両脇に貼る縦2枚にはそれぞれ7文字、横向けに貼る1枚には、4文字の熟語を書くのが一般的だ。
 さて、この春聯、もともとは「桃符」という名前で、その名の通り桃の木から作られた板だった。
これは早くも紀元前は春秋戦国時代から見られる風習だったのだが、
板から今のような紙に変化したのは、宋代のこと。
しかし、名前はまだ「桃符」のままだった。
 春聯と名付けたのは、明の初代皇帝・朱元璋(しゅげんしょう)。
書道に長けていた彼は、自ら書くのはもちろん、
庶民たちに春節には春聯を張り出すよう、勅命まで出したというから驚きだ。
さらに街を見て回ったところ、1軒だけ春聯を貼っていない店を見つけ、
書いてもらう人が見つからなかったという事情を知ると、
自らオリジナルの文句を書きつけたというエピソードまである。

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お金を運ぶ財の神
爆竹で盛大に迎え入れ

 さらに赤い飾りたちをよく見ると、今年の干支であるウサギをモチーフにしたものが多数を占める中、
どじょう髭に豊かなあご髭を蓄えたおじさんのステッカーが混ざっている。
いや、おじさんなどと呼んでは罰が当たるだろう。
彼の名は「財神」、中国神話の中では、名前の通り、お金を司るという神様と言われている。
 この「財神」のモデルとなったとされる人物は数いるが、
中でも代表的なのが小説『封神演義』に登場する仙人「趙公明」だ。
言い伝えによると、財神は非常に怠惰な性格で、1年に一度、旧正月5日目にしか下界に降りてこない。
しかも気まぐれで、どの家に財をもたらすか、その日の気分で決めていたという。
 そこで人々は、この日に再び爆竹を盛大に鳴らし、
自分の家に来てもらうよう呼びこむようになったというわけだ。
同じ爆竹でも、大晦日は怪獣を寄せ付けないため、5日目は財神を呼びよせるためと、
全く正反対の意味が込められている。
 しかし財神が来ずとも、子どもにとっては、「紅包」、つまりお年玉がもらえれば万歳だろう。
紅包は「圧歳銭」とも呼ばれ、中国語では「歳」と「祟」の発音が同じことから、
祟りが抑えられ、もし怪獣「年」が子どもを襲っても、そのお金を与えて難を逃れられるようにといった、
大人たちから贈られるお守りのような物なのだ。

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年越し蕎麦+おせち=?
語呂にちなんだ料理を

 そして、やはり欠かせないのは「食」。
大晦日の夜に家族全員で食べる、日本で言うところの年越し蕎麦にあたるのが、「年夜飯」だ。
とはいえ、年越し蕎麦のようにこういう名前の料理があるわけではない。
その点では、どちらかと言うとおせちに近い感覚だ。
具体的に食べるものは、おせち同様、土地によっても差があるが、必須なのは、「餃子」と「魚料理」。
どちらも、おせちに入る、「喜ぶ」にかけた昆布巻きや「めでたい」につながる鯛の塩焼きなどと同様、
語呂にちなんだ由来がある。
 まず、餃子。
これは清の時代まで使用されていた貨幣・銀錠(ぎんじょう)に形が似ていることと、
発音が「交子」(子宝に恵まれる)と近いことから、金運・子宝祈願を兼ねて、
年越しの際に食べられるようになったという二重の謂われがある。
正に縁起たっぷりの料理だ。
 また魚料理は、魚の発音が中国語で「余」と同じことから、
「年年有余」(年々、余裕が出てくる)につながるとされる。
そのほか、餅を表す中国語「年?」も、発音が「年高」と同様で、
「年年高」(年々高くなる)に通じることから、縁起が良いとされている。
 しっとり静かな日本の正月と、真っ赤に彩られた街で爆竹を派手にならす中国の春節。
習慣にこそ違いはあれど、縁起を担いで良い1年を過ごしたいという思いは同じ。
今年の春節は上海で、中国風に過ごしてみては如何だろうか。

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~上海ジャピオン1月28日号

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