自然豊かな地に生きる

タイ族（傣族）は雲南省シーサンパンナ（西双版納）タイ族自治州及び徳宏タイ族チンポー族自治州に住む。温暖な気候で、降水量も多く、国内でも有数の稲作地として知られる。正月に行われる水かけ祭り「溌水節」が有名。この祭礼では、叙事詩や語り物を語る吟遊詩人が活躍する。森林が生い茂り、山や川などの自然資源に恵まれた同地区は〝動植物の王国″と称され、近年では観光業とゴム栽培の発展に力を入れている。

天の恵みに感謝する舞

これら土地の特色も関係し、タイ族の伝統舞踊は、主に動物をイメージして作られている。「孔雀舞」を始め、「馬鹿舞（アカシカ舞）」、「獅子舞」、象の足を模った大きな太鼓を用いた「象脚鼓舞」と、バラエティが豊か。音楽にも動物の鳴き声や、水音など自然界の音がそのまま取り入れられている。振り付けにも動物たちが森を散歩したり、水を飲んだり、枝に留まったり、羽を広げたりする様子が表現される。舞踊はその大部分がしなやかで美しく、穏やかなリズムのものが多い。女性的な身体の曲線を生かした動きも見られ、ベリーダンスとも似ている。

この舞蹈の特徴の１つに〝三道弯〟がある。胸、腰、ヒザの３カ所にカーブを描くことで、より女性らしい柔らかさを演出する、というものだ。また手の形もユニークで、クジャクの嘴や頭、羽を広げた姿などを形作る。なお衣装においても、ボディラインに沿わせたものが多いため、女性をより美しく見せるダンスと言われている。

くびれを強調し、インナーマッスルに効果がありそうなタイ族の踊り。美しいボディライン維持のためにチャレンジしてみるのもオススメだ。

祭り好きのウイグル族

ウイグル族（維吾爾族）は主に新疆ウイグル自治区に分布。タクラマカン砂漠周辺のオアシス低地で、果物や穀類の栽培を行う。豊富な楽器を持ち、情熱的な歌と踊りで広く知られる。

同民族のダンスは、その昔、砂漠で暮らす遊牧民が天に踊りを捧げたことが起源。また祭事を好む民族として知られ、祭日や結婚式、親族や友人が集う時に、村人総出で舞踊会を開くとか。土地が広大であるため、踊りにも南部は叙情的で美しさ、軽快さを、北部は豪快さとユーモアを併せ持つという、その地ごとの特色が反映される。

東洋のエキゾチックな舞

「維吾爾族舞踊」で使われる音楽は、イランやインドなどの影響を受けた、エキゾチックな曲調となっている。肩を動かさず首だけを揺らす独特の振り付けに、手首のスナップ、目だけで強調される表情などが目を引く。ウイグル族の人々は、金、銀などのきらびやかなアイテムを好み、スパンコールを散りばめ、キラキラした衣装をまとう。また同地の女性は、昔からの習慣で髪を切らないため三つ編みスタイルに帽子を被って踊る。しかし時間の流れとともに文化も変わっていき、最近では短髪の女性でも踊れるよう、三つ編み付きの帽子もある。豆知識として押さえておきたいのが、片腕を頭上に掲げ、腰を押さえるポーズの由来。これは、もともと帽子が落ちないよう押さえながら踊っていたため、自然とこのような振りになったのだとか。そのほか、男性は蛇の皮を張った伝統的な太鼓でリズムを刻む。

頭を上げ胸を張り、腰を伸ばした姿勢を基本とする。そのほか、手首を返す動作では、身に付けたアクセサリーが光るところも見所だ。

広域に暮らすチベット族

チベット自治区、青海省、四川省、雲南省、甘粛省など広範囲に居住するチベット族（藏族）。チャンタン高原を中心に今なお遊牧生活を続ける人々と、ヤルツァンポ河流域に定住して農業を営む人々に分けられる。彼らの間で代々受け継がれてきたのが「藏族舞」。この踊りは大きく分けて２種類あり、余興として披露するものと独自の祭祀に行うものとがある。

その由来については、遡ること１５００年以上。チベット族に伝わる祭りの１つに「望果節」というものがある。これは、豊作を祈り、天に向かって舞いを捧げる行事とされる。毎年収穫の時期に、田畑周辺に布を巻きつけた幟と羊の右腿を掲げた先導に続き、裸麦の穂を持った農民と、チベット族伝統の衣装を身にまとった女性が列をなし、豊作を祈願したことに始まるという。

ひらひらと舞う天女の舞

「藏族舞」の中で特に特徴的なのが、長い袖をなびかせて踊る「鍋荘舞」。この舞踏の最大のポイントは、背丈以上もある長い袖の衣装「水袖」を十分に使った踊り。振付けは、一瞬で両腕を大きく開き、ひらひらと舞うようにゆっくりと回転させるなど、布をより美しく見せる工夫が凝らされている。農閑期に、男女が混じり、円陣を組んで踊ることが多い。山間部という土地柄から、荷物を背負って山を登るような前屈みのポーズが基本姿勢となっている。また骨盤の上に手を固定するポーズ、上半身を左右に揺り動かす動作のほか、力強く身体を広げる動き「卓」、滑らかな回転「旋子」、独特なリズムを刻むステップ「踢踏」が重要とされる。

優雅な舞いの中で刻まれる、独特なタップに注目しよう。

～上海ジャピオン２０１４年１月１０日号