パラグライダーで翔べ、SHANGHAI

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中国語では「滑翔傘」

では早速、体験スタート! と言いたいところだが、そもそもパラグライダーって何? という人も多いだろう。

パラグライダーとは、スポーツ用に開発された滑空性能を持つパラシュートで、空を飛ぶスカイスポーツの1種だ。中国語では「滑翔傘」という。

パラセーリングやハンググライダーとよく混同されるが、特にパラセーリングは名前が似ていることに加え、両方とも「パラシュート」を使うため間違われるようだ。

パラセーリングで用いるのは、安定した降下が可能な円形のパラシュート。海辺のリゾート地などで、パラシュートをモーターボートで引っ張っている

マリンスポーツがソレだ。一方、三角形の翼から吊り下げられた状態で滑空するのが、ハンググライダー。

動力を持たず、熱上昇風を捉えて高度を上げていく原理、仕組みはパラグライダーと同じだが、固定された翼で飛行できるので、

滑空スピードは時速100㌔を超えることも。

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気流を読む力を磨け

これに対しパラグライダーは、2枚のナイロン生地を袋状に縫い合わせ、そこへ空気を取り込むことによって翼型が保たれ、フライトが可能となる。

パラグライダー自体は動力を持っていないので、放っておけば高度は下がるばかり。ではどうやって空高く飛ぶのか?

そこで必要になるのが上昇気流に乗ること。鳥が高く飛ぶのはこの上昇気流を上手に使っているからだ。よって、パラグライダーでは、

体力や力でなく天候や気流を読む力が求められる。

ここで、パラグライダーの主要部分の名称を、右下の写真を参考にしながら簡単に紹介する。まずはパラグライダーの翼の部分「キャノピー」①、

そしてパイロットを支え、翼の形を調整する「サスペンション・ライン」②、これを1本のベルトで束ねたものが「ライザー」③、コントロール紐「ブレークコード」④、

パイロットの身体を支える安全ベルト「ハーネス」⑤。

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80年代末からブーム到来

今では世界中で楽しまれているパラグライダー。その誕生は1978年、フランスで3人のスカイダイバーが山の斜面でパラシュートを広げ、

着地練習を行ったのが起源と言われている。そして86年、フランスの登山家ジャン・マルク・ボアバンがモンブラン登頂後に、パラグライダーで下山し、

一躍世界に知れ渡ることとなった。日本ではこの頃から本格的なパラグライダーブームが到来、80年代末には中国にもその波がやってきた。

パラグライダーに興味を持ってきたところで気になるのが、ライセンスが必要かどうかどうかだ。パラグライダーの「ライセンス」は空を飛行する技能を証明するもので、

法的な拘束力はない。ただ実際に自己流で行うことは難しく、危険も伴うため、スクールに入り、インストラクターの監督下で行うのが一般的である。

では、次ページから実際の体験の様子を見ていこう!

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パラグライダー体験

苦節3年の念願企画

実は苦節3年、天候により何度も流れてきたこの企画。今回も7月に到来した台風の影響で、週末が来るたび天気が荒れ、2週連続で体験がキャンセルに。

しかし、ジャピオン一の晴れ男、オダッチが「僕にやらせてください!」と手を挙げてくれたその週の金曜夜、スクールから決行の連絡が来たのである。

これはオダッチが太陽を味方に付けたに違いない! そう言えば顔も心なしかテルテル坊主っぽいし…。

今回お世話になるのは、体育局の営業許可を持つ「上海我心飛翔倶楽部」。こちらはパラグライダー用品を主に扱う「上海我心飛翔体育器材有限公司」直営の

スクールで、体験はもちろん、ライセンスも取得可能だ。訓練基地は市内に2カ所、そのほか福建省と海南省にも飛行基地がある。

眼下に広がる緑の海

本日の体験場所は、奉賢区の申隆生態園。市街地からは直線距離で35㌔以上離れ、近くには軌道交通もなく、少々不便なエリアだ。

自家用車でのアクセスが理想的だが、車など持たない取材班はスクールが用意する車に乗せて行ってもらうことに。

朝8時、1号線「外環路」駅の南口にて、教官の到着を待つ。当日は取材班のほか、今回が2回目という女性が1人と初参加の男性1人も一緒だ。

移動時間は約1時間、駅近くのパン屋に寄り、車内で朝食を済ませる。車代は往復で1人50元、タクシーで行くと片道200元以上はかかる。

目的地へ到着し、車を降りるとそこには緑鮮やかな芝生の絨毯が広がり、大都市・上海の喧騒を忘れさせてくれる。それにしても暑い。

取材班が暑さに参り、日陰で休んでいる中、教官始めスタッフたちはテキパキと準備を始め、スクールのフラッグを木に固定。

これがパラグライダーの風を計るのに大切なアイテムだと、この時は知る由もなかった

 

 

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チームに分かれて講習

メンバーがそろったら2チームに分かれ、インストラクターによる操作説明が行われる。

まずは写真★のAの「ライザー」。これを引っ張るとパラシュート部分「キャノピー」が立ち上がり、滑空可能な状態となる。パラシュートが起動したら手を放して良い。

次にDの「ブレークコード」で機体のコントロールを行う。左右で傾きを感じたら、高い方のブレークコードを下げれば調整できる。

下までしっかり引くと、パラシュート内の空気が抜け、安全に下降する仕組み。なお、この「ブレークコード」は命綱の役目を果たすので、

着陸するまで決して離してはいけない。

続いて機体と身体を接続する「ハーネス」の取り付け方。股下から延びる紐を左右の腿に締め、胴回りもしっかりと固定する。

この時、脚部分は拳1個、胴回りは手を開いた状態で入るくらいに締めるのが理想的。これよりもキツくても緩くてもダメなのだとか。

最初に成功したのは

説明が終わったら、立ち上げ練習↑フライトチャレンジ。しかし体験者のほとんどは、パラシュートの中に風が均等に入らず、すぐにバランスを崩してしまう…。

中々成功者が出ない中、1人の女性がフワリと空へ舞った!? これを見た参加者たちは、我も我もと教官に練習を申し出るのだった。

機体を起こす感覚をつかんだら、次は腹部に紐を付け、教官たちに引っ張ってもらって飛ぶ練習。自力では飛べなかった人も、これでとりあえずの飛行感覚を味わえる。

さてさて、仲間の練習をじっくりと観察し、脳内シミュレーションは完璧なオダッチ。「準備は万端だ!」と意気込みだけは一丁前…

ところが、インストラクターの合図でスタートするも、風のパワーが強く、前進しない。そのままパラシュートはバランスを崩し、横へ倒れていく。

手の位置がポイント

めげずに2度目の挑戦をするも、やはりグラついて林の中へと倒れていくオダッチ。飛ぶことに必死になるあまり、教官の合図も耳に入らず、なおも前進を繰り返す。

見兼ねて「ストップストップ!」と叫ぶ取材班。「手が開き過ぎだね」と教官、オダッチが疲れていると判断したのか、今度は取材班が挑戦することに♪

よし、いいところを見せるぞ! と意気込むも、体重が軽すぎ(笑)、足が宙に浮いて前進できない。つま先立ちの変な助走に、周囲から笑いが起こる。

しょんぼりしていると「ロープを使えば大丈夫!」と教官3人掛かりで引っ張ってくれ、ついにフワリと大空を舞うことができた♪

恩を仇で返すオダッチ

その姿を羨ましそうに眺めるオダッチ。やさしい教官は「次はキミだよ」とオダッチに再びチャンスをくれる。

しかし、その大事なチャンスも手の開き過ぎという失態でおじゃんに。それでも諦めず再トライすると…う、浮いた! しかし、あろうことかオダッチはロープを

引くスタッフの頭にキックをかまし、帽子を飛ばしてしまった。

初の成功フライトを終え、オダッチの顔には満面の笑み。先ほどの無礼な行為は全く頭にないらしく、カメラの前でノリノリのポーズを決め、

「いや~、気持ちいい!」と興奮冷めやらぬ様子。

最後にみんなで記念撮影をして、本日の体験は終了~。真っ赤に日焼けした顔は、がんばった勲章。「今度は自分の力で浮きたい!」とやる気のオダッチに、

初級の資格取得には8000元必要と告げられ、一気に表情を暗くするのだった。

 

 

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~上海ジャピオン8月7日発行号

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