上海 コスプレイヤーズ インタビュー

特集-P1-1

特集-P1-2

古代文化を守りたい

漢服ライフを満喫中

宮廷ドラマを彷彿とさせる漢服で颯爽と現れたのは、今回唯一の男性コスプレイヤー、葬琴さん。漢服とは明代末期~清代初期以前の漢民族の伝統的な民族服で、ボタンがなく大きい袖と柔らかい輪郭を特徴としたものだ。葬琴さんはほかにも、この時代の正式な礼服で使われる「上衣下裳」や、日常で用いられる、着丈が長く袖の広がったゆったりした「深衣」が好みだそうだ。

葬琴さんが漢服に興味を持ったのは、18歳の時。学校の歴史の授業で秦や漢の時代に興味を持つとともに、中国らしい文化に感銘を受けた。外国に比べて中国は昔のものを大切にする考えが弱いと考え、中国の古き良き文化を継承していくため、漢服を着るようになった。「漢服は我々のルーツ。これを着ることで、古代の自分に出会える気がする」と話す葬琴さん。髪も長く伸ばし、仕事時以外は漢服で過ごしている。「漢服は洋服と同じように洗濯できるし、日常使いにとても便利なんだ」と熱弁を振るう。

そんな彼は、10人前後のコスプレグループのリーダーを務める。普段使いの服とは異なり、煌びやかな衣装に身を包み仲間と一緒に作品を作り上げるのは、また別の楽しみがあると言う。不定期で市内各所へ出掛け、撮影会を行っている。

取材当日は、同じくコスプレ仲間の萌萌さんも同伴。彼女は葬琴さんが束ねるコスプレグループのメンバーで、半年前に加わったばかり。しかし、漢服に興味を持ったのはもっと早く、幼少期だった。歴史的建造物が多く残る河南省で育った彼女は、地元の観光地などで催される伝統芸能の衣装に魅了され、いつか着てみたいという思いを強くした。そんな折に葬琴さんと知り合い、コスプレの世界に足を踏み入れたという。

 

 

特集-P2-1

ゲーム好きが高じて

初めてのコスプレ体験

静安寺のショッピングモールに出没するコスプレイヤー2人組。あまりの美男子ぶりに、女性とわかっていても声を掛けるのをためらってしまう。ともに日本のブラウザゲーム『刀剣乱舞』ファンで、今回はその中のキャラ・へし切長谷部と燭台切光忠の装いだ。

燭台切光忠をまとう眠鳥さんは、芸術大学を卒業後、ゲーム会社でデザインを手がける。驚いたことに彼女、今回一緒にいたAyuhangさんに誘われて、この日がコスプレデビューなのだとか。Ayuhangさんは微博のフォロワー数が2万を超える人気のコスプレイヤーで、サイン会も開かれるほど。2人の出会いは、眠鳥さんがへし切長谷部の絵を描いてSNSでアップしたところ、同じく『刀剣乱舞』ファンのAyuhangさんがそれを見て連絡したのがきっかけという。これまでは外での撮影が恥ずかしく、なかなか挑戦できずにいたのだが、今回初の撮影会を終え、とても楽しかったと目を輝かせる。「へし切長谷部」とはもともと、南北朝時代に製作された、日本の国宝に指定される刀の名称だ。同名の刀剣男士キャラが大好きな眠鳥さんは、刀本体が保管される福岡市博物館に出向いたり、京都での特別展に足を運んだり、そのハマりっぷりは本物のようだ。

なお近頃はスタジオ撮影が人気で、映画のセットのようにテーマの異なる部屋へカメラマンを調達して撮影するのだという。スタジオ使用料は1時間当たり80元前後。別途有料でカメラマンをスタジオにお願いすることもできる。

彼女らが上海で最も〝アツイ〟と推す同人誌イベントは年2回、6月と11月に開かれる「COMIC CUP」。同人誌の販売はもちろん、会場はコスプレイヤーで溢れるのだそう。

 

 

特集-P2-2

大学の課題で初コス

日本のアニメで育つ

大学時代、ファッションデザインを専門に学んでいた橙橙Dさん。課題でコスプレ衣装を制作して以来、その魅力にハマっていったという。作った衣装は、その数何と300着以上。いらなくなった衣装は人に売るなどし、有効活用してきた。

これまで手がけた衣装の中で一番のお気に入りは、ゲーム『戦国無双』の石田三成。撮影した作品は自身の微博にアップしており、フォロワー数は1万7000を超える。なお中国で最も有名とされるコスプレイヤー「KENN王爺」はフォロワー数60万超、日本の著名コスプレイヤー「REIKA(麗華)」を大きくしのぐことから、中国でのコスプレ熱がいかに高いかがわかる。

取材当日、橙橙Dさんの私服はボーイッシュなスタイル。ファッションへの関心が強いだけあって、実にオシャレにまとめている。衣装は主に布市場で材料を購入し自作するか、家の近所の裁縫屋でオーダーするという。この裁縫屋さん、橙橙Dさんのオーダーを受けるようになり、その腕の良さが口コミで広がってほかのコスプレイヤーからの依頼も増え、今ではコスプレ衣装専門で生計を立てるように。この日もちょうど、衣装が仕上がったと連絡が入った。今回発注していたのは、ドラマ『琅琊榜』の衣装で、近々仲間3人と杭州で撮影を行う予定とのこと。撮影会は、企画を立て仲間を集うことから始まる。昔からの仲間に声をかけ、それでも集まらなければ微博で呼びかけるそうだ。

最近のコスプレイヤーの主流層は、幼い頃日本のアニメを見て育った〝80後(1980年代生まれ)〟から、日本のアニメを見ていない世代へと変化。そのため、この頃では小説『全職高手』や『盗墓筆記』やゲーム「剣網参」といった、中国物をテーマにしたコスプレが増えてきているという。

 

 

特集-P3-1

コスは青春のすべて

ハンドメイドで格安に

色白でふんわりとした雰囲気が魅力的な瑠璃子さん。ぱっと見「お人形さんみたい」な彼女、実はコスプレ歴10年というベテラン選手だ。

彼女の衣装はすべてハンドメイド。しかもデザインスクールで学んだ経験もなく、不要な衣類をバラバラにして組み直すを繰り返し、独学で身に着けたという。そのうち趣味が高じて、普段遣いの服も自作するように。さらには小道具の製作、メイク、ウィッグのカットやカラー、セット、撮影後の写真の加工も自分で行うというから驚きだ。最近は衣装がネットで安く購入でき、その種類も豊富、メイクも50〜200元で専門の人に頼めるため、自作する人は少ないのだとか。彼女を始め、昔からの手作り派コスプレイヤーは自作衣装を販売し、中にはマンションを購入した人もいるという。

瑠璃子さんは高校時代、アニメ好きのクラスメイトに誘われてこの世界に入った。しかし、誘った友達はその1回限りで続かなかったそう。「コスプレ は青春」と話す瑠璃子さんだが、昨年〝コスプレの甲子園〟と呼ばれる「チャイナジョイ」への参加を最後に、ステージに立つのを卒業したという。理由は「もう若くないし、しんどいから」。1回ステージに立つために5カ月の間、毎週土日に練習をする。ちなみに最後のステージのテーマはゲーム『九陰真経』で、この時の衣装製作費もわずか30元ほど。

さらに彼女、日本の映画『下妻物語』の深田恭子に影響され、6年ほどロリータファッションをしていたことも。当時の中国にはロリータブランドが少なく、ここでも衣装制作の技術が役立った。「ロリータはファッションだから、毎日着られるのが楽しい」と話すも、友達が辞めてしまい、着なくなったという。

 

 

特集-P3-2

仲間と協力する楽しみ

メンバーはコスプレイヤー5人にカメラマン3人、監督1人、アシスタント2人の総勢11人。メイクや髪のセットはお互いに協力し合って行う。

撮影はリーダーの葬琴さんが書いた台本をもとに進められる。台本はゲームのストーリーとは関係なく、オリジナルなのだとか。監督の千葉さんによる細かい演技指導のもと、映画のワンシーンを撮影するように撮っていく。途中1回おやつ休憩が挟まれたが、それ以外は昼食も取らず日が暮れるまで黙々と撮影を続けた。

撮影終了後は火鍋で打ち上げ。撮影の振り返りや次回の企画など、大いに盛り上がる11人だった。

 

~上海ジャピオン2016年03月11日発行号

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