日本で台頭する中国企業
近年、中国企業は政府が目標として掲げる〝中国発の世界的ブランド〟への成長を目指し、続々と海外市場へ進出するようになった。最近の日本でもその傾向は顕著で、「海底撈火鍋」や「小肥羊」に代表される火鍋店や、蘭州ラーメン店に行列ができたニュースを目にしたことのある人も多いだろう。ほか上海でもお馴染みの「COCO都可」、「鹿角巷」、「貢茶」などで提供されている〝タピオカミルクティー〟は、観光客を中心にブームが続いている。
中国系ブランドの人気は飲食業界に留まらない。スマートフォンを通して広がったショート動画コミュニティで、中国では「抖音」の名で知られるアプリ「Tik Tok」や、オンラインゲーム「荒野行動」なども、日本人の若者の心を掴んでいる。特に「Tik Tok」は、日本の中学1年生女子の半数以上が使っているという驚異の浸透ぶりだ。
迷走する「MINISO」
一方で苦戦を強いられる中国企業も多い。一時ネット上でパクリ疑惑が生じ、話題となった雑貨店「MINISO」は、広東省に本社を置く「名創優品産業」が2014年夏に日本初出店した。しかし1号店の池袋店は昨年9月にすでに閉店しており、都内に残るは高田馬場店の1店舗のみとなっている。なお、千葉県幕張新都心に位置するイオンモール内など、郊外への出店は加速。それでも現在は全国に10店舗程度だ。このイオンモールには、ほかにも上海発のファストファッションブランド「MJスタイル」が、昨年6月に日本に初上陸している。
大型連休中にこの両店を訪れてみたところ、どちらも他店舗に比べて客足はまばらだった。競合ひしめき合うなかで、他ブランドに品質や値段で差をつけない限り、生き残るのは難しいようだ。では、先に挙げた火鍋店やドリンクスタンドはどんな様子だったのか? 次のページで見てみよう。
中国とほぼ変わらぬ品質
まずは「海底撈火鍋」新宿店へ。2015年9月に池袋店がオープンしたのを皮切りに、都内をはじめ大阪や神戸にも出店している。予約が取れないとの前評判どおり、店の前には入店を待つ人の列ができていた。入口には菓子などのサービスがあり、中国の海底撈と遜色ない。店内では、名物である変面ショーや、舞いながら麺を伸ばすパフォーマンスも。初めて見る人も多く、撮影をする観光客らしき人がいた。味もほぼ同等だが、つけダレに関しては若干の相違が否めない。客の8割は中国人とも言われるが、実際は半数ほどで、場所柄のせいか様々な国籍の人が鍋を囲んでいた。
次に訪れた「小肥羊(シャオフェイヤン)」渋谷店でも、向かいの「ドン・キホーテ」で買い物を済ませた外国人が寄るパターンが多いせいか、日本人はさほど入店していない。メニューを見る限り、日本においては火鍋というと〝薬膳スープ〟との位置付けが強く、寒い時に身体を温める目的や、美容のために取るイメージを持つようだ。スープに着目してみると、ナツメやクコの実などのスパイスが小ぶりであったり、新鮮ではなかったりする。やはり日本で調達できる食材にも限界があるのだと感じる。味も本場より劣るのか、海底撈に比べ中国人客が全然見当たらない。
繁華街では1時間待ちも
都内の繁華街では、「珍珠奶茶(タピオカミルクティー)」専門店に大行列が出来ている。〝ミルクフォームやタピオカで自分好みにカスタマイズできる、中国台湾発のティーカフェ〟という位置付けで、客層は韓国人などの観光客と、日本人の学生が多い。長い時で購入までに1時間以上待ち、購入後はスマホ撮影が目立つ。ブームの先駆けは、15年9月オープンの「貢茶(ゴンチャ)」原宿表参道店だ。そして17年2月には「CoCo都可(ココトカ)」が、同年7月には「鹿角巷(ジ・アレイ ルージャオシャン)」が日本上陸を果たしている。味は中国で飲むより茶葉に深みがないような気がするが、3店舗ともほぼ中国と変わらないと言っていいだろう。
衰えを見せない出店ペース
閑散としていた雑貨・ファッション系とは打って変わり、火鍋や中国台湾系ドリンクなどの中国飲食店に関しては、しばらく右肩上がりの傾向が続くように思えた。一つ、中国と大きく異なる点は、価格が現地より2倍3倍高いということ。しかし、そもそも中国でもっと安く、おいしく食べられると知らなければ、多少高くても並んで買う価値のあるものなのだろう。
一時大ブームとなった拉麺
日本に出店した蘭州拉麺店が大行列と言うニュースは記憶に新しい。このブームを巻き起こしたのが、蘭州市の老舗店「馬子禄(マーズルー)牛肉麺」であった。現在同店では、混雑する時間帯を避ければ並ばなくても入店できる。味は中国で食べるものと変わりなく、とても美味。オフィス街に位置し、ビジネスランチとして周辺の日本人に多く利用されているようだ。
続いては「麻辣烫(マーラータン)」の専門店「張亮麻辣烫」高田馬場店へ。こちらも上海でよく見かける店だが、日本でもすでに大阪、名古屋などに6店舗を展開。入店時は客、スタッフともに中国語を話す人しかおらず、全てが中国式に回っていた。麻辣烫専門店は都内のあちこちで出店ラッシュが続いている。〝薬膳春雨スープ〟として、辛い物好きの日本人女性に人気が高いようだ。
配車サービスは競争激化
中国の配車サービス大手「DiDi」は、日本のタクシー大手「第一交通産業」と提携し、18年9月より大阪でサービス提供を開始。19年4月、エリアを全国13都市に拡大すると発表、4月24日から東京と京都でも利用できるようになった。今後は北海道、兵庫、福岡などに順次拡大予定だ。なお、都内ではすでに「Uber(ウーバー)」や「CREW」、「MOV」、「LINE TAXI」など他社競合がひしめき合っており、新規参入は難しいのが現状だ。
日本では13年11月に「Uber」がサービスを開始したが、配車アプリの便利さは広く受け入れられており、利用者は増加傾向にある。知らない人の自家用車に乗る抵抗感はないかと調査した結果、「CREW」などはタクシーより安く乗車できるとあって、10代、20代の若年層の利用率が増えていると言う。
モバイクは国際事業撤退
モバイクは19年3月に国際事業撤退を表明。モバイクジャパンは正式な声明を発表していないが、関東では唯一のポート(駐輪場)があった神奈川県大磯町の3カ所でスキャンを試みたが、すでに機能が停止されていた。
同社は17年8月に札幌で、12月に福岡でサービスを開始。だが主要駅周辺はカバーエリアに含まれておらず、数㌔離れた場所に数カ所ポートがあるのみだった。
日本では決められたポートエリアでの乗降に限られているため、利用者も限定的だったことが一因のようだ。都心では、ドコモ・バイクシェアが提供し、自治体ごとに管轄が異なる「東京自転車シェアリング」の利用者をたまに見かける程度で、生活に浸透しているとは言い難い。道路事情により、普及には時間を有するだろう。
~上海ジャピオン2019年5月17日発行号