いい具合に整備された水郷
「南翔小籠包」でおなじみの「南翔老街」は、300㍍四方の小さな水郷。清代末期の街並みを再現しており、中心部にある双子の石塔と古井戸がランドマークだ。
上海では古くから、美しい古鎮を称える「金羅店、銀南翔、銅江湾、鉄大場」という言葉が有名で、〝銀〟の南翔鎮は、上海で羅店鎮に次ぐ風光明媚な場所として知られてきた。規模は大きくないものの、観光客がさほど多くなく、路地裏や川のほとりに、昔ながらの人々の暮らしが垣間見える〝いい具合の〟観光地だ。
入場は無料。中にある、かつて文人墨客が詩吟を楽しんだという個人の中国庭園「檀園」は入場料22元。大衆点評には、これに小籠包10個が付いたお得な「チケット」(35元)なども販売しているので、利用するといいかも。
南翔小籠包発祥の地へ
せっかく南翔に来たのだから、小籠包は外せない。先の「南翔老街」に並ぶ小さな店舗でつまむのも悪くないが、地元の人がもっとも愛するのが、中国庭園「古猗園」に隣接する「古猗園餐庁」の小籠包だ。ここは黄浦区豫園内の「南翔小籠饅頭店」と並ぶ知名度の高さで、看板にも〝南翔小籠包発祥の地〟と謳う、清代から続く名店。現在は惜しくも店舗改装中につき、スペースを狭めて営業中。小籠包は15個30元~。
たらふく食べたら、明代の建築が残る美しい中国庭園「古猗園」を散策しよう。
いにしえの都を思わせる
11号線の終点「嘉定北」駅から、さらに公共バス「嘉定12路」で走ること5駅。「州橋老街」は知る人ぞ知る観光スポットだ。
800年の歴史を持ち、明・清時代の建物の面影を残すこのエリア。石畳の向こうには、嘉定県ができるさらに前、1205年頃に建てられ、その後修繕を重ねてきたという七重の塔「法華塔」がそびえ立つ。青々とした川の流れに掛かる橋、瓦屋根の家と石畳の道路…。近くに高層ビルがないこともあり、その風景は昔の江南をそのまま切り取ってきたかのよう。絶好の写真映えスポットとして、漢服を着た若者が集まりそうなものだが、観光客の姿はほとんどない。観光客向けの店も少なく、地元の人が行き交うばかりだ。
嘉定の歴史をひも解く
ところで「州橋老街」を中心とするエリアをマップで見てみると、道路や川の流れが丸く円を描いていることがわかる。どうして丸い形の町を作ったのか…、その理由は、「州橋老街」向かいの「嘉定博物館」へ足を運べば詳しく説明されている。
2003年にオープンした同博物館は、中国風建築と、現代の建築物が融合したユニークな見た目で、一見の価値あり。嘉定の発展や文化について解説されている。なおその裏にある「秋霞圃」も中国五大古典園林に数えられる美しい公園。特に秋の紅葉が見事だ。南側には、山水画の巨匠・陸俨少の作品を収めた「陸俨少芸術院」も。
自動車のテーマパーク
昔ながらの風景が色濃く残る嘉定区。一方で、国際レーシングコース「上海国際賽車場」に代表されるように、近年は自動車産業に関する施設をたくさん新設している。
11号線「江蘇路」駅から約1時間、「上海汽車城」駅周辺は、北に「フォルクスワーゲン」の巨大工場、南に自動車公園「上海汽車公園」を構える自動車の町。公園内には博物館から展覧会場、自動車試験運転区、キャンピングカー停泊所、ボート乗り場までを備え、親子で行けば一日中遊んでいられるスポットだ。
中でも「上海汽車博物館」は車やレーシングカー好きなら一度は行っておきたい博物館。館内は3階建てで、1階では馬車に始まる車の歴史を、2階では貴重なアンティーク・カーを、3階では車の内部やパーツを表示。広大なフロアに美しい車が並ぶ様子は圧巻だ。レースゲームや運転を楽しめる子ども向けコーナーもあり。入場料は1人60元、6歳以下は無料。
最新自動運転技術を体感
また園内には、国内初となる5G自動運転技術を体験できるエリア「EV―AI智行港」も設置。ここでは5G自動運転技術を搭載した自動車に試乗でき、実際に3㌔の道のりを走行する。通行人や交通量を感知し、速度を自在に操る最新の技術を体験しよう。事前予約が必要で、アプリ「R汽車」をダウンロードのうえ、トップ画面で「5G」と検索、イベントページから登録する。
~上海ジャピオン2021年6月4日発行号